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都市・環境・建築

奥河津波避難タワー

2020.06.13

普段はオープンスペースとして使える奥河津波避難タワー(南西側)

 

概要

 奥河津波避難タワーは徳島県美波町の中心地である日和佐浦エリアの木造密集市街地内に2021年10月に完成しました。周辺には四国88ヶ所第23番札所薬王寺がある風光明媚な港町ですが、大浜海岸や日和佐川が近接し「最大クラスの津波」(南海トラフ巨大地震)による浸水想定では最大5m程度の浸水深が示されており、防災対策が進められている地域です(本敷地の想定浸水深は最大h=2.84m)。町の津波避難タワー整備計画に基づき整備された3棟のうち2棟は先行して竣工しており、本タワーは最後の1棟です。本タワーは高台等の避難場所へ津波の到達時間内に避難できない「特定避難困難地域」の約半分の人口を収容できる津波避難タワー(町指定の一時津波避難場所)となっています。建物は津波漂流物等による二次被害を防ぐため、浸水想定深からさらに3m程度余裕をみた高さを避難スペースのレベルとし、また地域の高齢化率を考慮して階段に加えスロープを併設しています。

建物の特徴

 内・外装がほとんどないRC打放し仕上げのスケルトンの構造となっているのが大きな特徴です(ほぼ構造体)。また、柱・梁の主架構とスラブの平面の位置は、一般的なラーメン形状は□+□でスラブの隅に柱があることが多い構造となっていますが、この建物では◇+□のように位置関係を45°ずらしています。この柱配置によって、表側に迫ってくる柱が少なくなり心理的な圧迫感を減らす効果があります。
 深めの庇は風雨・津波火災対策としての役割がありますが、この地域の古い建物に多く見られる出桁造り(だしげたづくり:外側に伸ばした梁に桁を架けて造る深い軒の架構形式)が作り出す町並みに馴染ませる効果もあります。
 1階ピロティは普段から周辺住民が集ったり、地域の祭りの準備スペース等としても使えるオープンスペースの機能も持っています。また、上層階への出入りも自由でいつでも誰でも上ることができ、日常生活の一拠点として活用されることで、地域住民の防災意識の向上が図られることが期待されています。美波町では現在、本タワーを含む公共空間を地域のポケットパークとして活用することを検討中です。

 

けんどん(上げ落とし)式雨戸パネルを設置する様子

照明全点灯時の様子(屋上階)

建物の基本仕様

想定収容人数
258人(1m²/人)
各階FL高さ
・避難階(2階)FL:GL+6.0m(浸水深3m+余裕3m)
・屋上階FL:GL+9.0m
諸室
(建築基準法の「居室」は無し)
・備品倉庫:1箇所(避難者全員が一泊程度滞在できる物品を備蓄)
 面積:31.70m²
・予備倉庫:1箇所
・災害用簡易型トイレ設置スペース:4箇所(衛生設備は常設しない)
※上記諸室の部分には壁、扉を設置し、施錠可能
風雨対策(避難時)
・けんどん式雨戸パネルをはめ込む(普段は開放)
照明電源喪失対策
・電力供給は太陽光発電+蓄電のみでまかなう(商用電源からの引込みは無し)
・照明喪失時の対策として、階段段鼻・スロープ手すり部材に高輝度蓄光材付き製品を使用

 

業務名
令和元年度(仮称)奥河内地区津波避難タワー設計業務
設計期間
2019年8月23日~2020年5月29日
発注者
徳島県美波町

 

業務名
令和2年度(仮称)奥河内地区津波避難タワー新築工事に伴う監理業務
監理期間
2020年7月28日~2021年10月15日
発注者
徳島県美波町

 

※設計は一級建築士事務所マチデザイン(美波町サテライトオフィス進出企業)、金箱構造設計事務所との協働により実施しています。

※業務名は仮称で、正式名称は「奥河津波避難タワー」となりました。