高架橋設置により生じる日陰を3次元で可視化

2025.8.7

UAVで取得した3次元データを用いて地形モデル(TINモデル*)を作成し日陰を可視化

公共事業施行により発生する周辺住民への影響を検討

一般国道42号すさみ串本道路は、和歌山県の東牟婁郡串本町から西牟婁郡すさみ町までを結ぶ全長19.2kmの自動車専用道路で、防災、交通の安定性、医療支援、観光活性化といった多方面で重要な役割を果たすことが期待されています。
一方、公共事業の施行を原因として、周辺家屋等に損害等が生じることがあり、工事との因果関係の判定や、損害等をてん補するために必要な最小限度の費用負担を行うことがあります。本業務では、高架橋を設置することにより、周辺家屋に日陰による損害等が生じる可能性があることから、その影響の程度や、暖房・照明等の費用負担の要否について検討しました。

補償業務のDX ~高架橋設置により生じる日陰を3次元で可視化~

EJECでは、事業施行地の周辺住民に対する説明の一助となるよう、デジタル技術を活用して、高架橋の設置に伴う日陰状況を可視化する資料を作成しました。UAV等の計測機器で取得した3次元計測データから地形モデルを作成し、時間ごとの日陰状況が確認でき、住民の方々の理解が容易となるよう努めました。
本業務の調査対象は冬至日に日陰となる住宅居室で、日常生活で受忍限度を超える日陰が発生することが確認された場合には、損害等をてん補するために要する費用(暖房費、照明費、乾燥費等)を算定しました。
なお、日陰時間の算出は、日照チャート図を作成して判断しました。チャート図は、対象施設の位置や標高とともに、周囲の山の標高(立木の高さを含む)などを、計測機器で把握し、正確な日陰時間を算出して作成したものです。
これらの適正データに基づき、補償基準との整合性に留意しながら、影響の有無を判定しました。

* TIN(Triangulated Irregular Network)モデル:頂点ポイント(標高点)を結んだ三角形の集合で地形などを表現するものです。

業務名 すさみ串本道路高富地区他家屋調査等業務
業務内容 日陰時間の算出、補償金の算定、UAV・地上レーザー地形等計測
家屋調査・図面作成12棟、日照チャート図作成58箇所、気象データ資料収集等
1業務、補償金算定10棟
期間 2024年3月28日~2025年3月18日
事業主体 国土交通省 近畿地方整備局 紀南河川国道事務所

レーザー:国土交通省(国土地理院を含む)やJIS(日本工業規格)ではレーザと称する