2.2 地震動分布

 地震動の大きさと被害の関係を考える上では、地震動分布が必要となる。ここでは、以下の方法で、1kmメッシュ最大地動分布を評価した。

●補間方法
 Simple Kriging 法(観測点では観測値に一致)を採用する。
  トレンドは、Shabestari&山崎(1999)1)の式を用い、相関距離は20kmとしている。今回は、点震源で行ったが、今後、断層の拡がりを考慮していく必要がある。

●観測点
 表1に示す16地点(K-NET9点、KiKnet2点、JMA5点)を用いる。

表1 強震域における観測値


●地盤情報
 若松ら2)による1kmメッシュ地形分類と、松岡ら3)による次式のVs30との関係を用いる。

  
ここで、a,b,c,d:回帰係数、Ev:標高、Sp:傾斜(正接の1000倍)、Dm:先第三系・第三系の山地・丘陵からの距離(km)、である。

●増幅度
 最大速度:翠川・松岡・作川(1994)4)
 計測震度:末冨ら(2005)5)

●結果
 得られた計測震度分布を図2に、最大速度の分布を図3に示す。
 作成された地震動分布では、輪島市中心部、輪島市門前地区、穴水町および志賀町富来地区の範囲に震度6弱以上のエリアが広がっている。震度6強(計測震度6.4)が観測された、石川県震度情報ネットワークの輪島市門前町走出の震度計周辺は、木造建物の被害が甚大であったが、谷筋の八ヶ川に沿って集落が形成されているこの地域は谷底平野にあたり、空間補間によると震度6強と推定されており、定性的ではあるが、被害イメージとの対応は良いと考えられる。この他にも震度6強と推定されている地域がいくつか見られる。輪島市中心部のJMA輪島観測点付近や穴水町のK-NET穴水観測点付近で震度6強となっているあたりは、谷底平野〜海岸平野にあたり、局所的に増幅度が大きい地点であると言える。また、輪島市門前地区から志賀町富来地区にかけての海岸沿いで震度6強と推定されているあたりは、砂礫質台地であり、良好な地盤であるが、震源からの距離が近いため大きな震度となっている。強震波形が公表されていない他の観測点についても、ほぼ計測震度0.5程度以内の範囲の誤差(震度1階級以内の範囲の誤差)におさまっているが、七尾市田鶴浜では、震度6強(計測震度が6.2)が観測されているのに対し、推定値は震度5強(計測震度5.3)となっており、震度2階級の誤差となっている。気象庁の報道発表もなされているが、現地調査を行った結果、この地点では周辺地盤の液状化により震度計が傾斜しており、能登半島地震本震では、実際よりも大きな震度が記録された可能性があると考えられる。


図1 若松らの1kmメッシュ地形分類


図2 計測震度分布


図3 最大速度分布

参考文献
1)Shabestari, K. T. & Yamazaki, F.(1999): Attenuation relation of strong ground motion indices using K-NET records, 第25回地震工学研究発表会講演論文集,pp.137-140.
2)若松加寿江・松岡昌志・久保純子・長谷川浩一・杉浦正美(2004):日本全国地形・地盤分類メッシュマップの構築、土木学会論文集、No.759/I-67、pp.213-232.
3)松岡昌志・若松加寿江・藤本一雄・翠川三郎(2005):日本全国地形・地盤分類メッシュマップを利用した地盤の平均S波速度分布の推定、土木学会論文集、No.794/I-72、pp.239-251.
4)翠川三郎・松岡昌志・作川孝一(1994):1987年千葉県東方沖地震の最大加速度,最大速度にみられる地盤特性の評価、日本建築学会構造系論文集、第442号、pp.71-78.
5)末冨岩雄・石田栄介・磯山龍二(2005):空間補間による地震動分布推定の高精度化のための一検討、第28回地震工学研究発表会、土木学会.



能登半島地震被害調査報告トップへ